半獣人の子供は、こちらの叫び声に驚いて、大きな目をくるくるさせている。
本当に、どこまで分かって言っているのか。
やっぱり、このプラムは全く予測がつかない言動をする。

ロードはにやり、と口の端を歪めた。
「そーゆーのも、意外と面白いかもしんねえな」

「はい?何か面白いこと言いましたか?ボク・・」
プラムが首を傾げた。
「おう、まーな」
この子供の一族を滅ぼした・・とは言わないが、滅ぼすのに自分が一枚噛んでいるのは事実である。自分が狩った数多くのアプラサスのうちの、1匹がこの子供の母親であったことは間違いないし、父親も然りである。
因果応報。

「気が向いたら、手伝ってやるよ、アプラサスの復興」
「え?本当ですか?」
今度はプラムが大きな声で問い返す。
「お前、本当に意外そうに言うなよ。腹立つっ」
現役兵士も裸足で逃げ出す迫力で美少女が睨む。プラムはいつもの弱気な表情に戻る。困った顔で何やら口ごもっている。
「だ、だって〜・・ロードさん、見たいですか?」
「何?」
やっと聞き取れるくらいのプラムの声に、過剰に返答するロード。プラムは自分の大きな耳を掴みながら、
「アプラサスが昔みたいに、家族が出来るくらいになるのを・・見たいですか?本当にそう思うのですか?」
「ああ、なるほどな・・」

確かに。
その昔、アプラサスが滅ぶのに手を貸した自分が、またアプラサスが増えればいい、と手のひらを返すのも、おかしな話だ。
アプラサスなんて、慈悲の一族なんて反吐が出る。こうも言った。

そんな自分がアプラサスの復興を望むなど、筋が通らない。
けれど。

「アプラサスの家族なんてのは、はっきり言ってうっとうしいかもな。けど・・お前の家族なら、ちょっと見てみたい気もするな・・」
この変わり者のアプラサスなら。
自分の偏見を覆してくれるかもしれない。
「ほへ?」
古代の精霊族の末裔は、間抜けな顔でこちらを見ている。

「・・前言撤回・・」
ロードはこれで幾度目か、数える気にもならない溜め息をついた。
「やっぱ、うぜぇ・・」
「そんなぁ〜!ちゃんと確かめてくださいです〜!」
またプラムが子供っぽく泣きついてきた。ロードは視線をわざと相手から外した。

目の前には、時折火花を噴く焚き火があかあかと燃えていた。 夜の闇を照らしながら。

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